第5曲 コラール「慈しみもてわれらを死なせ」変ロ長調、4/4拍子
5曲目は、合唱・全楽器で演奏されます。この曲は、宗教カンタータ第96番「主キリスト、神の独り子」の最後の曲である第5節を編曲したものと言われております。
特徴は、コラールがバイオリンとオーボエが演奏するリトルネッロの間節に歌われる構成となっていることです。
ここではバッハと「リトルネッロ」について少々触れておきます。
リトルネッロとは、バロック時代の協奏曲に多く見られた形式で、バッハの作品には珍しいものではありませんが、代表的な曲は後に触れる「イタリア協奏曲」などがあります。
ご承知のように「イタリア協奏曲」は鍵盤楽器曲ですが、「協奏曲」と名付けられているのは、「協奏曲」はこのリトルネッロ形式から来ているところから来ているのです。
また、リトルネッロは、ロンド形式と似かよったところがありますがその違いは次のとおりです。
ロンド形式の場合には、ロンド主題が毎回同じ主調で演奏されるのに対して、リトルネッロでは、楽曲の最初と最後以外は主調以外の調で演奏されるのです。
また協奏曲では、リトルネッロを全合奏で、リトルネッロに挟まれた部分を独奏楽器群が演奏します。
そして興味深いのは、この22番の特徴に見られる技法は、宗教カンタータ第147番「心と口と行いと生活で」BWV.147(別名:「主よ人の望みの喜びよ」)や第105番「主よ、汝の下僕の審きにかかずらいたもうなかれ」BWV.105など、1723年頃に作曲されたカンタータの最終曲に共通して適用されている傾向があるという事実ではないかと思われます。