6つの無伴奏バイオリンソナタ 第6曲「パルティータ第3番ホ長調」(その8)

6つの無伴奏バイオリンソナタ 
第6曲「パルティータ第3番ホ長調」BWV.1006(その8)

第6曲「パルティータ第3番ホ長調」BWV.1006は、話題豊富な曲でもあるので、前回に続いて
もう少々触れてみたいと思います。

この曲の、第1楽章のプレリュードと第3楽章のガボットとロンドは、リサイタルなどでは単独で演奏される機会がよくある程の曲で、バッハの作品であることを知らなくても、誰もがどこかで耳にしたことのある曲の1つであるとの印象を持つことでしょう。

バッハ自信もこの曲のできの良さに満足していたのか、BWV.1006aにてリュートあるいはハープによる変奏曲を創作しているのです。

個人的に興味深いのは、第6楽章のジグです。
ジグは、このような組曲では終曲に配置するのが一般的でメジャーな手法であるのです。

この点、バッハも敢えてこのような流行を取り入れているところにも意外性を感じ取ることができます。

ジグは、元々は早いテンポのフランス風潮の影響を受けたフーガの技法で、曲の締めくくりには最適であるものとバッハ自信も共感していたものと思われます。

ここでの演奏は、ギドン=クレーメル(1947年、ラトビア(旧ソビエト連邦)出身の希に見る巧みな技巧能力を持つ名バイオリニスト)、イツァーク=パールマンの双方で甲乙つけがたいので、双方で聴き比べてみることをお薦めします。


6つの無伴奏バイオリンソナタ 第6曲「パルティータ第3番ホ長調」(その7)

バッハの6つの無伴奏バイオリンソナタ 
第6曲「パルティータ第3番ホ長調」BWV.1006(その7)

この曲集のパルティータとしては、最後の曲になる第3番は、次の6楽章形式で構成されています。

第1楽章「プレリュード ホ長調 、 3/4拍子」、
第2番「ルール ホ長調、 6/4拍子」、
第3楽章「ガボットとロンド ホ長調、2/2拍子」、
第4楽章「メヌエット ホ長調、3/4拍子」
第5楽章「ブーレ ホ長調、2/2拍子」、
第6楽章「ジグ ホ長調、6/8拍子」となっています。

この曲の特徴は、全6楽章がホ長調で構成されている為か、全体に華麗な旋律を基調としながらも明朗な曲調が随所に見られるところにあると言えるでしょう。

また、1つ前のパルティータ第2番二短調と同様に、全6曲の中でもバッハの作品においても名高い曲であり多くの人々に愛され続けているのです。

特に、第1楽章のプレリュードと第3楽章のガボットとロンドは、人気があり、ラフマニノフ(1873-1943年 ロシア:旧ソビエト連邦)もこの曲の1部を編曲している程です。
また名演奏家達が、競って自己の技巧性高い演奏を録音しています。

バッハの「6つの無伴奏バイオリンソナタ」 第5曲「ソナタ第3番ハ長調」(その6)

6つの無伴奏バイオリンソナタ 
第5曲「ソナタ第3番ハ長調」BWV.1005(その6)

この作品集で3番目となるソナタも、第2番と同様に4楽章形式からなる曲の構成となっていま
す。

この曲の特徴は、第2番ほど旋律に華やかさは見られませんが、6つの無伴奏バイオリンソナタの曲集の中で、唯一の長調で作られているところにあります。
また、典型的な教会ソナタの形式の影響を色濃く映し出している曲であると言えます。

第1楽章は「アダージョ・ハ長調、3/4拍子」、第2楽章は「フーガ・ハ長調、 2/2拍子」でここで登場するフーガは354小説からなる長大なものです。
またこのフーガは、バッハの全ソナタの中でも最も長大で、この曲の最大の魅力でもあり、聴くものを圧巻させるところがあるのです。

第3楽章「ラルゴ・ヘ長調、4/4拍子」、第4楽章「アレグロ・アッサイ、 3/4拍子」となります。
またフーガの主題になっているのは、古く名高いコラール「来たれ、聖霊よ」を用いられており、バッハの精巧で緻密な音楽感を表現する為の効用効果がよく表現されているものと思われます。

ここでの演奏は、ギドン=クレーメルも良いのですが、個人的にはイツァーク=パールマン(1945年:イスラエル出身のバイオリニスト、20世紀最大のバイオリニストと称されている)の演奏をお薦めします。

バッハの「6つの無伴奏バイオリンソナタ」 第4曲「パルティータ第2番ニ短調」(その5)

バッハの6つの無伴奏バイオリンソナタ 
第4曲「パルティータ第2番ニ短調」BWV.1004(その5)

この作品集で2番目のパルティータですが、他の曲には無い特徴が幾つかあります。
まず曲の構成が5楽章形式であり、全5曲が二短調で作られているところです。
また、全6曲の中でも、一番広く親しまれている曲でもあり、第5楽章の「シャコンヌ」は、後にピアノの演奏用に編曲されており特に名高い曲でもあるのです。

各々楽章は、第1楽章「アルマンダ 二短調 4/4拍子」、第2楽章「コレンテ 二短調 3/4拍子」、第3楽章「サラバンド 二短調 3/4拍子」、第4楽章「ジガ 二短調 12/8拍子」、第5楽章「シャコンヌ 二短調 3/4拍子」となっております。

なお、第5楽章のシャコンヌは、全部で257小節からなる非常に長い構成で、特定の低い音、執拗音型を用いた変奏曲であるところから、その名称の由来があるとされています。

音楽史においては17世紀までその多くが快活な3拍子の舞曲的な位置付けにありました。
またバイオリンの特性を踏まえながらも、多種多様な演奏技巧が含まれており、同時に深い精神的要素、また宗教的な崇高さが感じられるのがこの曲の特徴でもあります。

特に、演奏における技巧性が要求される主題旋律は、三重音・四重音を多用している為に、非常に難易度の高く、バイオリニストの演奏技術や表現力の豊かさが問われる曲でもあるのです。

この演奏は、数ある名演奏の中でも、特にナタン=ミルシティン(1903-1992年:ウクライナ出身のアメリカのバイオリニストで、バイオリンの貴公子と称された。)で聴いてみることをお薦めしたいところです。