ビバルディが活躍していたかなり以前より、バロック時代には、今のオペラが形式として確立された、という重要な時代でもありました。
ビバルディも数多くのオペラを作曲していますが、これからしばらくは、このバロック音楽とオペラについて、その歴史や社会背景などを交えながら、どのように発展していったのか、さまざまな角度から書いていきたいと思います。
バロック時代初期(1)<「音楽劇」から「オペラ」へ>
ヨ―ロッパの中でも、特にイタリアのオペラの歴史は、古くからそのめざましい発展が見られ、確固たる史実が残っております。
その歴史をたどると、「オペラ」という名称すら初期の頃には存在していなく、当時の作曲家自ら「音楽による寓話」などと称されていました。
ただしこの当時の作品に関しては、むしろ「音楽劇」と総称されたほうが適当であると考えられている一面もあります。
その背景には、西洋音楽史の流れとして、中世ルネサンスのマドリガーレが基礎になっています。これは1540年代になり、イタリアのマドリガードとしても発展していきますが、徐々に新しくモノディア形式が取り入れられる傾向へと移行する背景があったためである、とも考えられております。
これらは、マレンツィオ(1554~1599年)やジェズアルド(1561~1613年)らといった、当時の作曲家の作品に見られる、独奏旋律のパートや和声を意識した劇的な表現からうかがい知ることができます。
また、ルネサンスの社交的な娯楽の曲調を崩す方向に促す傾向にあったことが関係しているものと思われます。
バロック初期においては、このような音楽の発展性が、流動的に一連の西洋音楽全体を変革させていき、最終型は近代の歌劇と呼ばれる要素を含んだスタイルに様変わりしていった時期であったと考えられております。