ビバルディ、オラトリオの創作1

ビバルディ、オラトリオの創作1

ビバルディは、前述でも触れておりますように執筆の手を休めることなく精力的にオペラの創作活動を継続していきますが、1716年頃になるとピエタ養育院での音楽活動よりも、劇場を中心にオペラの作曲に力を注いでいたと言われております。

これを背景に、同年にオラトリオ「勝利のユディト」を作曲し、これが成功を治めると教師の立場を回復していくことになり、更にこの年ピエタ養育院の合奏長に就任しております。

この背景には、当時のベネチアが軍事的に重大な局面を抱えていたことが関係していました。

日々オスマントルコとの戦況が悪化し、敗戦の寸前を迎えていましたが、「勝利のユディト」が上演された頃には、戦況は一転しベネチアの勝利と栄光を称える作品として、晴れやかに演奏されたと言われております。

シナリオは、ユディト(古代ユダヤの信心深い女性として知られる)を、ベネチア共和国に例え、ホロフェルネス(アジア南西にあった古代帝国アッシリアの大将)をオスマンに見立てた構成とされており、唯一完全な楽譜が残されているオラトリオとなります。

この様に機転よく、時代背景をうまく利用して、自己の形勢までをうまく変えてしまうビバルディはなかなかの知恵者でもあったようです。