ビバルディが協奏曲やオペラ創作の絶頂期において、これらの分野以外にも作曲活動の功績が見られます。
ここではそのうちの1つであるオラトリオに焦点をあててみたいと思います。
オラトリオは、元々ローマ・カトリック教会に由来する宗教的な音楽であり、聖書などから引用した語句を多く用い、これらを多様な曲調と組みあわせ劇風に構成された歌劇の一種となります。
基本的にはオペラと類似していますが、演技などの演出はなく、また劇場で使用されている大道具、小道具、衣装などの装飾を用いないのが基本とされております。
またオラトリオの語源は、教会などに設置された、神に祈りを捧げるための間(部屋)を指しており、ここで執り行われるようになった修養にマドリガーレやカンタータなどが取り入れたことによって、オラトリオの形式が生まれたと言われております。
なお、修養とは協会の聖職者と敬虔な信者が祈祷・説教・聖書の朗読・宗教曲の歌唱からなる宗教的な取り組みを行うことで、礼拝などの行いではなことから、その形式は自由で、世俗的な要素が取り入れられていたと考えられています。
この点、ビバルディ自身ピエタの教職者であったことから、普段から宗教音楽の演奏、作曲に恵まれた環境にあり、歴史的にも大きな遺産となるオラトリオの創作ができたものと思われます。