第1曲 「アリオーソと合唱」ト短調、4/4拍子
1曲目は、テノール・バス・オーボエ・弦楽器・通奏低音・合唱により演奏されます。
曲自体は、受難を予告したイエス(バス独唱)が、自分の複数の弟子達(コーラス)に「見よわれらエルサレムへ上る」と悟りを語る名高い聖書の一場面をモチーフに、バッハが独自の主情的な旋律にて創作したものです。
まず弦楽器が、オーボエで奏でられる独奏音のオブリガート(主旋律と同様に重要な伴奏のパート)を反復する旋律があり、この形式がたびたび登場してくるので初めて聴いても比較的、馴染みやすい曲想であると言えます。
また聖書の引用部分の場面においては、テノールによる解説でレティタティーボが独唱されると、早々に流麗なバス独唱による福音がとって代わり、弦楽器を主体とする楽器群の伴奏が続いていきます。
しかしながら、これと対照的にソプラノ独唱によるフーガの主題が始まると突然これらの伴奏を奏でる楽器群は、これまでの旋律を一旦終止し途切れさせながらもこれを反復していき、イエスの意図することを理解しきれない弟子達の躊躇や迷いを表現しようとしているのではないかと思われます。