「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」のニューイヤー・コンサート


クラシックファンとって、年末年始は、第九とニューイヤーコンサートですが今回は「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」のニューイヤー・コンサートについて簡単に触れてみたいと思います。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートは、毎年11日にウィーンの名高いウィーン楽友協会大ホール「ムジークフェラインザール」から、世界70カ国に向けて同時にライブ放送される名門「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」による歴史あるクラシックのコンサートです。
 
ちなみに、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートは、1939年にウィーン出身の名指揮者であるクレメンス=クラウス(18931954年)により初めて開催された歴史があります。
 
なお、演奏される曲は、ウィーンにちなんだ曲の中でもワルツ、ポルカなどで構成。
 
特に、ヨハン=シュトラウス一家(1世、2世、2世の弟ヨーゼフ)の作品が主体に演奏され、コンサートを統率する指揮者も毎年変わるユニークな型式です。
 
またこれらの曲目も、毎年指揮者が変わるので、これに合わせて曲目も変わるのですが、毎年演奏されるお決まりの曲については各々の指揮者の持ち味で脚色されるのも見どころです。
 
特に、コンサートの最後に必ずアンコール曲として演奏されるヨハン=シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」」作品228は、観客達が毎回演奏に合わせて手拍子する光景があり、大いに賑わいを見せる特徴があります。

バッハのインべンション(その5)BWV779

バッハのインべンション(その5)BWV779

第8番・ヘ長調 BWV779 「4/3拍子」
第8番の特徴は、ピアノを練習する人、好きな 人なら誰でも耳にしたことがあるほどメジャーな旋律で一度印象深い曲です。

曲の特徴としては、序盤から明朗で軽快なリズムで表現されており、聴いたことがない人でも一度聴くとこの曲の独特なメロディーのとりこになるでしょう。

演奏時間は、1分強程と比較的短めですが、このわずか1分間のなかに巧みな旋律がほど良く 敷き詰められており、下降音と8分音符との絶妙なカップリングが見られます。

近年では、ピアノの演奏で知られる他にも、パソコンでの電子効果音に使われるなど、世界の人々に広く親しまれている曲でもあります。

初めて聴こうとする方は、是非クラビアでの演奏を聴いてからピアノの演奏を聴き、双方で是非き比べてみてください。

同じ曲でも、時代を超えて第8番が相違して聞こえてくるかもしれません。

バッハのインべンション(その4)BWV777~BWV778

バッハのインべンション(その4)BWV777~BWV778

前回に続いて、バッハのインベンションについて紹介していきます。
今回は、第6番~第10番までの特徴となります。

第6番・ホ長調 BWV777 「3/8拍子」
この曲の特徴は、巧みな切分法を用いているところにあります。
切分法とは、シンコペーションとも呼ばれ、ひとつの音階がより劣位性のある拍から、より優位性のある拍に演奏されることで生みだされる独特のスタイルです。

たとえば、小節の弱い拍から、次の小節の最初に置かれる強拍まで対になりひとつの音としてつながっている形式が、典型的な切分法となります。

またこの第6番は、そのほかのインベンションよりも演奏時間が長め(3分程)になっていますが、これは、リピートとなる指示が楽譜に2か所以上も付いている為であり、多少なりとも聴きごたえを感じることができるかと思われます。

第7番・ホ短調 BWV778 「4/4拍子」。
第7番の特徴は、冒頭より抒情的なリズムが印象的なところにあります。
また少々長めに2つの同音が繰り返えされるリズムが、いかにもバロック音楽(バッハの作品)らしく、今更のように教えてくれるのです。

全体に淡白な曲想にも思われますが、ピアノの演奏ではけして聴くことができない、クラビアによる演奏でなければ表現されにくい、この曲のモチーフがよく浮き彫りにされた曲であると思われます。
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バッハのインべンション(その3)BWV774~BWV776

インべンション(その3)BWV774~BWV776

今回は、バッハのインベンションを第3番~第5番までの特徴を紹介していきます。

第3番・ニ長調 BWV774「3/8拍子」
第3番は、第1番と同様に長調で作られています。
全体的に明るく優雅な趣を表現しています。
一見すると坦々としているようですが、流れるような美しい旋律が特徴となっています。

第4番・ニ短調 BWV775「3/8拍子」
第2番と同様に短調で作られており、上昇音階が主体に構成されているモチーフです。 
複数のパートで、時おり異なる2つの音階を、やや長めに早いテンポで繰り返し演奏している個所がこの曲の特徴です。

第5番・変ホ長調 BWV776 「4/4拍子」
既にお気付きかと思いますが、インベンションでは奇数の作品では長調が、偶数の作品では長調で規則的に作曲されています。
第5番も、これに従いやはり長調で構成されています。
軽やかなメロディーが印象的で、聴く者がいつしか踊りだしたくなるような、また演奏の楽しさすら感じ取ることができる曲です。

バッハのインべンションBWV772~BWV773(その2)

バッハのインべンションBWV772~BWV773(その2)

前回に続いて、インベンションの紹介となります。
ここではBWV772~786までの全15曲、各々の特徴を簡単に触れていきたいと思います。

まず今回は、1番と2番についてです。

第1番・ハ長調 BWV772「4/4拍子」
15曲あるインベンションの中でもとりわけ名高いが第1番ハ長調です。
この曲の主題は、16分音符と8分音符の絶妙な組み合わせから構成されている独特な特徴があり、個人的には一度聞くとしばらく耳に残る旋律が印象的です。

第2番・ハ短調 BWV773 「4/4拍子」
第1番とは対象的に、第2番は短調で作られています。
冒頭では、下降していく音階をモチーフにした主題が特徴的です。また、前半の10小節と後半の6小節目までは2小節遅れとなる厳格なカノンが特徴です。

なお、カノンとは複数の楽器または声部が、同じ旋律で異なるタイミングでそれぞれが演奏または合唱をする様式の曲となります。

バッハの「インベンション」 BWV772~786(その1)

インベンション BWV772~786(その1)

バッハの後期ケーテンでの創作活動において、忘れてはならないのがインベンションです。
バッハは、インベンションを1723年頃にクラビア用に作曲しており、曲自体は全部で15の曲から構成されています。

またバッハは、この曲集を実の子供であるウィルヘルム・フリーデマン(長男)や、また弟子達に教育をするために作曲したものと言われています。

なお、インベンションとは、創作や着想などの意味を称しており、2声体の鍵盤楽曲で演奏される器楽曲で、イタリアやドイツを中心にバロック時代に確立、流行した音楽の1種でもあります。
特徴としては、2声の「カノン」、「フーガ」などポリフォニーの技法が含まれているところです。

また、一見すると簡潔な曲調に聞こえますが、そのなかに大変高度な作曲技法が盛り込まれており、バッハにとっては演奏技法だけでなく作曲技法をも含めて教育する為の、曲集であったと思われます。現代ではピアノ学習者にとって必須の曲集でもあるのです。

1曲1曲は短い小曲ですが、聴きごたえのある作品集です。

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」 第3組曲ハ長調 「第5曲~第6曲」

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」-第3組曲ハ長調 BWV.1009 「第5曲~第6曲」
6つの無伴奏チェロ組曲 -第3組曲としては最後になりますが、第5曲、第6曲を紹介します。

この第3組曲のその他の特徴として、これまでの第1組曲と第2組曲では第5曲において「メヌエット」とを配列する構成としていましたが、「ガボット」としているところにあります。

⑤第5曲「ガボット」 I/II三部形式、2/2拍子。
第1と第2のガボットから構成されています。
また、これまで第1組曲、第2組曲で5曲目に配列されていた「メヌエット」と同様に第1ガボットが反復される事なく演奏される特徴があります。

なお、この5曲目は、明朗かつ軽快でリズミカルな旋律が際立っており、随所に親しみ易い曲調を含んでいる為か、多くの人によく知られており、第3組曲の中核となる曲でもあるのです。

また、第2のガボットは、第1ガボットよりもより多様的に発展した旋律となっています。

⑥第6曲「ジーグ」二部形式、6/8拍子。
荘厳な旋律が特徴的で、聴く者を圧倒する勢いがあり、終曲に相応しいバッハの壮大な音楽感が満ちあふれた曲調となっています。

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」-第3組曲ハ長調 「第3曲~第4曲」

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」-第3組曲ハ長調 BWV.1009 「第3曲~第4曲」

今回は、前回に続いて6つの無伴奏チェロ組曲-第3組曲から、第3曲、第4曲」について紹介します。

③第3曲「クーラント」二部形式、3/4拍子。
3曲目は、随所に流暢で快活な旋律が見られるのが印象的です。
その為に、演奏者はチェロの弦の上を這わせる指の運びに気を配る必要があり、このような技巧性の高い演奏方は円滑な音域とその流れを生む弾みとなるのと同時に、バッハが如何に優れた演奏者であったかを垣間見ることができるものと思われるのです。

④第4曲「サラバンド」二部形式、3/2拍子。
堂々とした重厚な音域を用いて、絶妙な旋律を醸し出しており、大地を踏みしめるように段階的に音域が下降していくさまが、他の曲には見られない何とも優美な曲調となっています。

チェロ独特の重厚で鳴くような音色が、巧みに表現されており、個人的にはこの4曲目が一番印象が強く、気に入っているパートでもあります。

チェロの音色が好きな人には、是非この4曲目を念入りに聴いてもららいたいと思います。

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」第3組曲ハ長調(第1曲~第2曲)

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」-第3組曲ハ長調 BWV.1009 「第1曲~第2曲」

今回は、前回に続いて、6つの無伴奏チェロ組曲 -第3組曲から、第1、第2曲を紹介します。

①第1曲「前奏曲、プレリュード」12/8拍子。
リトルネッロ形式で作られており、特徴的なのはバッハがあまり自己の作品では取り上げて
いない演奏様式が見られる点です。

例えば、同じ旋律を重複させるパートにおいては、音の強弱を明確にする為の記号の配列が駆使されているところにあります。

また2本以上の弦を用いて同じ音を交互に奏でる事により絶妙な効果音を作り出している点にも、そのようなこの曲独特のモチーフを編み出しているのです。

②第2曲「アルマンド」二部形式、4/4拍子。
第1番、第2番組曲の「アルマンド」よりも、緻密でより繊細さが顕著に表現された曲調がいかにもバッハらしい優美な音の組み立て方であると思わせるようなところがあります。

また全体を通して曲のテンポも比較的、穏やかで程良くゆったりと着実に演奏されている面持ちがあり聴いている者に心地良さを与えてくれるのです。

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」 -第3組曲ハ長調

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」-第3組曲ハ長調 BWV.1009 (その5)

この第3組曲は、バッハの6つの無伴奏チェロ組曲の全6曲中の中でも最も広く親しまれた曲となります。

興味深いのは、バッハがこの第3番を作曲した当初は、演奏の主体となるチェロが、現代のチェロとは少々違う楽器が用いられていたものと言われております。

この楽器は2種類が想定されており、その1つは外観や演奏方法はチェロなのですが、現代のチェロよりも少々小型の楽器であった様です。

また一方では、現代のバイオリンやビオラのように肩において演奏するという小型の楽器であった様ですが、高域の演奏を実現する為に、弦を1本追加し合計は5弦とすることで、その音域は現代のチェロと同様であったと言われています。この曲は高音域で弾く旋律が多いので、このように弦を1本追加しない4弦では演奏に困難性が伴う曲であるのです。

なお、このような当時の古楽器を使用した演奏ではないのですが、希に見るその超絶した優れた演奏があたかもバッハの演奏を回想させるかのような心境にさせてくれる演奏を収録した1枚があります。

演奏を収録したCDとしては、以前この曲集の作曲の背景でも少々触れたように、やはりパブロ=カザルスの演奏をお薦めしたいと思います。

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲-第2組曲「第4曲~第6曲」

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲-第2組曲二短調 BWV.1008「第4曲~第6曲」(その4)

前回に続いて、6つの無伴奏チェロ組曲 -第2組曲二短調 BWV.1008の 「第4曲~第6曲」について紹介します。

④第4曲「サラバンド」、二部形式、3/4拍子。
冒頭で同じ音階が、チェロの2本の弦で奏でられるというユニークさが見られる特徴があり、
後半のパートにおいては、その独特の旋律から過去に見たことがあるような懐かしい情景を思い出させる雰囲気を感じさせてくれます。

⑤第5曲「メヌエット」 I/II、三部形式、3/4拍子。
第1組曲の「メヌエット」と同様に、大きく分けて第1部、そして第2部の軽快なメヌエットの後に再び第1部が演奏される3部形式で構成されています。
第2曲の「アルマンド」と同様に、ここでも再び重音が登場し、美しく整ったバッハらしい旋律を背景に、情熱的な要素が盛り込まれています。

⑥第6曲「ジーグ」、二部形式、3/8拍子。
早いテンポで演奏され、そのリズミカルで歯切れの良い音型に特徴があり、これが最後まで繰り返し展開されていきます。多声的な曲調の響きが印象的であるのもこの楽章の特徴です。

6つの無伴奏チェロ組曲-第2組曲二短調 「第1曲~第3曲」

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲
第2組曲二短調 BWV.1008 「第1曲~第3曲」(その3)

この第2組曲二短調 BWV.1008は、「前奏曲」からその後の 舞曲「クーラント」から「ジーグ」まで、先回紹介した第1組曲ト長調 BWV.1007と同じ構成になっています。
またこれら4曲の舞曲も同様にイタリア風な様式を採用しています。

①第1曲「前奏曲、プレリュード」、3/4拍子。
冒頭から徐々に上昇していく音階からなる旋律が、その音型がピークを迎えるまで展開されていき、最終楽節では五つの重音が連続して登場してきます。

なお、ここでも第1組曲と同様に分散型による和音で演奏されたり、より華麗な装飾による音階を適用することにより即興的に演奏される場合があります。

②第2曲「アルマンド」、二部形式、 4/4拍子。
重音や低音部を、巧みに用いて重厚さがうまく表現されており、舞曲の前に落ち着いた雰囲気を醸し出すことにより、これ以降の曲がより引き立つように曲を調整する楽章でもあるのです。

③第3組曲「クーラント」、二部形式、3/4拍子。
第1組曲と同様に、早いテンポで演奏されています。細かく緻密な音型が主体な旋律で構成されており、多声的な響きに特徴があるところが魅力でもあります。

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲 第1組曲ト長調 「第4曲~第6曲」

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲 
第1組曲ト長調 BWV.1007 「第4曲~第6曲」(その2)

前回に続き6つの無伴奏チェロ組曲-第1組曲ト長調 BWV.1007について、その「第4曲~第6曲」を紹介します。

④第4曲 「サラバンド」、二部形式、3/4拍子。
重音奏法を使って落ち着いた雰囲気が見られる曲調に特徴があります。
一見すると単純であるかと思われる舞曲の構成に、多声的な要素がふんだんに盛り込まれています。

重音奏法の技巧がかなり駆使されている為か、一つの楽器による演奏とは思えない多彩な効果音が随所に聴いて取れるのです。

このような重音奏法を大型の弦楽器であるチェロに取りこむのは、一般的に困難性があるのですが、バッハは主旋律に絶妙なフレーズを織り込む曲調を構成しているのです。

⑤第5曲「メヌエット」 I/II 三部形式、3/4拍子。
メヌエットは、第1部 ト長調、第2部のト短調に分けて構成されています。
しかし、ややもするとあたかも二部形式のように聴いてとれるのですが、第2メヌエットのすぐ後に、第1メヌエットが今度は反復すること無く登場し、再び表れるとの特徴があるのです。
この為、三部形式であると言えるのです。
また第3、第4曲と同じ様に速度指示の無い舞曲が主体となっています。

⑥第6曲「ジーグ」二部形式、6/8拍子。
イタリアのテンポが早い舞曲であるジグを取り入れており、その急速な舞曲の演奏には目を見張るものがあります。

以前ジグを6つの無伴奏バイオリンソナタ 第6曲「パルティータ第3番ホ長調」BWV.1006にも採用していることを、以前に紹介したことがありました。
このような背景からもバッハは、常に時代の最先端の流行を追うことも忘れずに自己の創作を行っていたものと思われます。

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲-第1組曲ト長調「第1曲~第3曲」

バッハの6つの無伴奏チェロ組曲
第1組曲ト長調 BWV.1007 「第1曲~第3曲」 (その1)

6つの無伴奏チェロ組曲-第1組曲ト長調 BWV.1007のまず「第1曲~第3曲」について紹介します。

①第1曲「前奏曲、プレリュード」、4/4拍子。
即興曲的な要素で構成されており、また比較的に自由な形式の曲調が含まれています。
分散型の和音が次々と移り変わっていく特徴もあり、ここがロドルフ=クロイツェル(1766~1831年、フランスのバイオリニスト・作曲家・指揮者でもあった)のバイオリニストのための練習曲集の第13番目に引用されており、全曲中でも最もよく知られる曲でもあります。

②第2曲「アルマンド」、二部形式、2/2拍子。
プレリュードと共に、本来は舞曲であるが、バッハの活躍したバロック音楽時代では、既に舞曲的な要素は無く、穏やかな曲調でまとめられています。

③第3曲「クーラント」、二部形式、3/4拍子。
軽快なリズム感のある舞曲で構成されています。
また、演奏自体は少し早めのテンポですが、実は演奏速度の指示が無いのです。
これは、本来の舞曲が持つ独自のテンポで演奏されることをバッハが目的にした創作性があったものと思われます。
この特徴は、以降第4曲から第6曲にも見られる共通した内容でもあるのです。

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」

バッハの「6つの無伴奏チェロ組曲」 BWV1007 ~1012 (作曲の背景)

1720年、バッハは依然としてケーテンでの宮廷楽長の職にありました。
前にも少々触れましたが、ケーテンでのバッハの創作活動においては世俗的な器楽曲を多く残しており、意外にも教会音楽の方があまり作曲されていないのです。
それは、この背景にケーテンの宮廷に宮廷楽団があった為であると言われています。

バッハはケーテンで、この宮廷楽団と深い関わりを持っていたのです。
楽団の一員となり自ら室内楽を演奏をしたり、楽団を指揮するなどの活動をしていた背景があるのです。

また、この宮廷楽団は小規模ながら当時の弦楽器奏者としては名高い名手が何人が所属していた事もあり、バッハの器楽曲として大変重要な位置付けにある作品の多くは、ケーテン時代にこの宮廷楽団のとの音楽活動をとおして生まれたものであったのです。

6つの無伴奏チェロ組曲(BWV.1007~1012)も、この楽団の一員であったチェロ奏者の為に作曲されたものだと言われております。

特にチェロを主体にした曲はあまり創作されていないので、特に貴重な作品であるのです。

なお、近代ではパブロ=カザルス(1876~1973年 スペインのチェロ演奏家、指揮者、作曲家)によって再発掘されて以来、チェリストの中では聖典的な作品と見なされるようになっているのです。

アンナ・マグダーレーナ=バッハの為のクラビィーア小曲集(その2)

アンナ・マグダーレーナ=バッハの為のクラビィーア小曲集(その2)

この曲集には第1巻と第2巻があり、第1巻には丁度この頃に作曲したと言われるにフランス組曲(BWV.812-817)の原曲と思われる曲やその他の変奏曲が含まれています。

第2巻には,バッハ自身の作品である「ゴルトベルク変奏曲」BWV.998のアリアや,「6つのパルティータ」(BWV825~830)からの一部 ,そして以前紹介した経緯のある「“平均律”クラヴィーア曲集」の第1巻ハ長調の前奏曲(BWV.846)が含まれています。

またこの他には、バッハの二男であるカール・フィリップ・エマヌエル=バッハ(1714~1788年)や他の作曲家の作品,作曲者不明の曲を多数含んでいます。

15.ポロネーズト短調 BWV Anh125、
16.アリアニ短調 BWV515、
17.メヌエットト長調 、
18.ミュゼットニ長調 BWV Anh126、
19.マーチ変ホ長調 BWV Anh127、
20.ポロネーズニ短調 BWV Anh128、
21.アリアト長調 BWV988-1、
22. Solo per il Cembalo 変ホ長調 BWV Anh129、  
23.ポロネーズト長調 BWV Anh130、
24.メヌエットニ短調 BWV Anh132、
25.3つのメヌエットト長調 BWV841、
26.3つのメヌエットト短調 BWV842、
27.3つのメヌエットト長調 BWV843、
28.小プレリュードト短調 BWV930、
29.運指練習曲(アプリカチオ)ハ長調 BWV994、

なお、ここでは オランダ出身の鍵盤楽器奏者、指揮者でもあるグスタフ・レオンハルト(1928年~)の演奏をお薦めしたいと思います。
彼は古楽演奏運動の第一人者、指導者でもあり、特にチェンバロ奏者として名高く、バッハの鍵盤楽器曲の演奏に定評があるソリストです。

アンナ・マグダーレーナ=バッハの為のクラヴィーア小曲集(その1)

アンナ・マグダーレーナ=バッハの為のクラヴィーア小曲集(その1)

ケーテンで幸福な日々をおくっていたバッハは、1722年に妻アンナへの感謝の気持ちを表現した作品、クラヴィーア小曲集を作曲しています。

通称、「アンナ・マクダレーナ・バッハの為のクラヴィーア小曲集」は、「同、楽譜帳」、「同、音楽帳」等とも言われています。

当時のバッハは家族と自己の作品を頻繁に演奏する習慣がありましたが、その際に演奏されていたと言われる曲や、バッハ以外の作曲家の曲で当時流行していた曲等をこの作品集に織り込んでおり、45曲程からなると言われていますが、ここでは以下の29曲程を紹介します。

曲集のタイトルを妻の名前にしてしまう事からも分かるように、自己の音楽活動を支えてくれている妻へのバッハの妻に対する深い愛情と、子供達に対する家庭を大事にしたバッハの父親らしさが感じられます。
尚、メヌエットト長調 BWV Anh114 は有名で、誰もが一度は耳にしたことがある曲です。

1.メヌエットヘ長調 BWV Anh113、
2.メヌエットト長調 BWV Anh114、 
3.メヌエットト短調 BWV Anh115、 
4.ロンド変ロ長調 BWV Anh183、 
5.メヌエットト長調 BWV Anh116、 
6.ポロネーズヘ長調 BWV Anh117、
7.メヌエット変ロ長調 BWV Anh118、 
8.ポロネーズト短調 BWV Anh119、 
9.コラールイ短調 BWV691、 
10.メヌエットイ短調 BWV Anh120、 
11.メヌエットハ短調 BWV Anh121、 
12.マーチニ長調 BWV Anh122、  
13.ポロネーズト短調 BWV Anh123、 
14.マーチト長調 BWV Anh124

バッハの生涯「ケーテン後期のバッハと3人の息子達」(その2)

バッハの生涯「ケーテン後期のバッハと3人の息子達」(その2)

バッハとマグダーレーナは、1723年から1742年の約20年間にわたり、13人の子供達を産みましたが、そのうちの7人は残念ながら早くに他界入りしてしまいました。

残りの6人の中で、バッハに勝るとも劣らない功名な作曲家になったのが、9番目の子で、活動地に言及して「ビュッケブルクのバッハ」とも呼ばれたヨハン・クリストフ・フリードリヒ=バッハ(1732~1795年)、そして11番目の子供で 「ロンドンのバッハ」と呼ばれたヨハン・クリスティアン=バッハ(1735~1782年)の2人でした。 

無論、先妻との間に生まれた二男のカール・フィリップ・エマヌエル=バッハ(1714~1788年)は、生前は父親よりも有名で、兄弟の中では誰よりも世俗的な成功を収めたので、「ベルリンのバッハ」、または「ハンブルクのバッハ」と呼ばれ、3人のバッハの中でも特に功名です。

また、クリスティアンは、バッハ一族の中では唯一、オペラを作曲し、これが大成功を治めたことから、生前に既に国際的にも名声を得た音楽家でありました。

さらに、バッハ一族の華麗な音楽の伝統を、まだ当時は幼なかったウォルフガング=アマデウス=モーツァルト(1756~1791年)に教えたことで現代でもその名が知られているのです。

またクリスティアンが、「ロンドンのバッハ」と呼ばれるのは、ロンドンでヘンデルの後継者となったことに由来するのです。

バッハの生涯「ケーテン後期のバッハ」(その1)

ケーテン後期のバッハ(その1)

しばらくケーテンで創作されたバッハの曲を紹介してきましたので、ここで少々この頃のバッハの私生活を覗いてみたいと思います。

1721年、36歳になったバッハは、かわらずケーテン公、レオポルトの宮廷楽長を務める中、多忙ながらも充実した日々を過ごしていました。

そんな中、バッハの作品を筆者してくれていたアンナ・マグダーレーナ(1701-1760年)と再婚しました。

アンナ・マグダーレーナは、バッハの故郷であるアイゼナハ近郊のツァイツの出身でした。
父は、ザクセン=バイセンフェルス公(1656-1680年)のヨハン・カスパール=ビルケ(1701~1760年)で、母マルガレータ・エリザベートは、オルガニストの娘で、マグダーレーナはこの7人きょうだいの末子でした。

前にも少々触れましたが、バッハは1717年からアンハルト=ケーテン侯レオポルト(1694~1728年)の宮廷楽長を務めていましたが、実はマグダーレーナもこのレオポルトの宮廷ソプラノ歌手であったのです。
ソプラノ歌手として、当時のケーテンでは実力派の人物として有名であったと言われています。

2人が結婚するきっかけになったのは、宮廷と言う同じ職場で知り合ったことによりますが、ビルケ家とバッハ家は、双方共に宮廷に仕える音楽家同士として、交流を持つようになりお互いに音楽に関して強く引かれあった面があったのだと言われています。

ケーテン後期のバッハは、マグダーレーナ、そして先妻の残した4人の子供達と以前よりも増してより幸福な生活をおくりました。特にマグダーレーナは、優れた歌手であったこともあり、バッハのたくさんの音楽作品の筆写譜をしてバッハの創作活動を支え協力したと言われています。